【ICT】吉野ヶ里のやぐらの測量って…?
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佐賀県が誇る、吉野ヶ里歴史公園
県内のみならず全国各地から観光客の絶えない『吉野ヶ里歴史公園』。
平成初期に古代史ブームが起こって以来継続的に新たな発見があり、悠久のロマンを感じることができる特別史跡として、現在も数多くの人を魅了し続けています。
復元建物の補修工事について
吉野ヶ里歴史公園の展示の中でも特に見応えのある、やぐらなどの復元建物。
実は弊社にて建設・補修工事に携わらせていただいています。
今回はその補修の中でも『測量』のお話しをさせていただこうと思います。
“やぐら”の測量に使うのは、最先端の技術…!
今回、取材をさせていただいたのはDX推進部。
朗らかな技術者たちが集うこの部署は、中野建設DX を進める中で、重要な役割を担っています。
今回の測量では『GLS2000』という3Dスキャナーを使用し、測量を進めました。
なぜ3Dスキャナーで測量するのか
3Dスキャナーは、レーザー光を物体に向け発射し、その反射光の特性を分析するような仕組みです。
3Dスキャナーを使用するメリットとしてまず一番に挙げられるのは、“歴史的な建造物の精密な3Dモデルを残すことができる”という点です。
歴史的な建造物は特殊な素材や技法が用いられることが多いため、これからの時代にそれらの技術を継承していくための選択肢の一つとして3Dスキャナーは用いられています。例えば、今回の吉野ヶ里の復元建物の屋根の素材は『本葺き』です。その1本1本の詰め具合(密度)も3Dレーザーで測量し、次回以降の補修工事の際にも変わらない高い品質を保つことができるようになります。
また、担い手不足がうたわれる昨今。“この道30年の職人さん”も“入りたての職人さん”も共に、イメージしやすい客観的データを用いて作業や検討が行えることも現在の建設業界では大切な要素になってきています。
測量の実際
測量で求める結果は前述したとおり、“高いレベルでの補修”のための『データ』です。
そのため工事前後の状態を比較できるよう、工事の前後で測量を行います。(『起工測量』、『出来高測量』といいます。)その他、構造物を三点で細かく区切ってモデルを作る『三角網モデル』や、それぞれの大きさの記録である『寸法』を収集することが目的です。
上の写真は、精密なデータを収集するためにスキャナーを水平に調整しているところです。公共座標に合わせ“地球上のどの位置にどんな大きさの建物がある”ということを記録として残すためには、測量時から丁寧な作業が求められます。
測量のステップとしては、ターゲットスキャン→写真の撮影→点群の収集の段階を踏んでいきます。大きさにもよりけりですが1つの対象物に対し、3時間前後の時間を要します。
測量したのち、PCでの作業が待っています。
専用ソフトを用いての作業はまささに職人技。
3Dスキャナーでは、レーザー光が照射される範囲のすべての物体をデータとして記録するため、現場に人や草木があるとき、それらの除去も必要です。この『ノイズの除去』の作業に、膨大な時間がかかります。
こうして様々な工程を踏んでいくことで、最終的な成果物が完成します。
今回の吉野ヶ里の測量では、合計2週間ほどの時間で6棟の復元建物のデータが完成しました。
まとめ
今回は吉野ヶ里遺跡の復元建物という、一般的な建築技法と異なる建造物でのICT技術の応用でした。このように中野建設では最新技術を取り入れることで業務効率化を図っていますが、それらは単に導入すれば終わりというわけではありません。
DX推進部の皆さんは、適材適所を見極めたり、より効果的な用い方を検討すべく、日々学ぶことに努めています。
街で『測量』を見かけた際には、今までより身近に感じつつ、そっと見守っていただければ嬉しいです。
ご覧いただきありがとうございました!